走り美 Quality Of Running
走り美 Quality Of Running

過去に参加したマラソン大会のレポート

2009年10月18日(日)

第28回蒜山高原マラソン全国大会

ハーフマラソン一般男子の部
 記録 1時間58分19秒

今年のぼくは攻めた。

ハーフマラソン4回目の挑戦にして攻めた。それは結果として初の2時間弱、1時間代への突入へとつながった。そのかわりゴール後はぐったり、攻めた分ぐったりであった。

思い起こせばこれまではゴールに「辿り着く」という表現がピッタリでようやく今回、ゴールまで「走り抜いた」と言えるだろう。走り抜いたと思えるのは腕を振り地面を踏む足にバネを最後まで感じていたからで、このバネこそが大会に向けて走りを調整するうえで最も注目していた要素である。

第28回蒜山高原マラソン全国大会 2009.10.18
第28回蒜山高原マラソン全国大会 フォト1

スタート位置にまず悩んだ。前にいるとそれはそれは速いランナーたちの、思い掛けずそのスピードに飲まれてしまう。後ろに下がり過ぎるとそれはそれで思い通りペースが掴めず自分としてのスタートが遅れてしまう。

下がり過ぎず前過ぎずと考えながら並んでみると思いのほか前方に位置していることを周りを見渡して後で気づいた。いつの間にか屈強なランナーたちに囲まれていることにドキドキしながらスタートを待つことになった。

第28回蒜山高原マラソン全国大会 フォト2

さてスタートしてみると先頭から伝わるその波は緩やかであのドキドキは何だったのかとしばし唖然となる。そこから自分のペースを確立するため前にする足に力を込める。このときから今年の僕は攻めたが始まっていた。

これまでなら周りのランナーのペースに合わせてゆっくりと調子が上がっていくことをむしろ望んでいたように思う。しかしこのときは自らの歩みを強めたいと欲していた。

第28回蒜山高原マラソン全国大会 フォト3

コース最初の難関でもうお馴染みとなった心臓破りの坂に差し掛かる。上りで歩みを強めるほどの脚力はまだ備わっていない。グイグイ上っていくランナーを横目に我慢の時が続く。ひと回り大きく筋肉質な脚を持つランナーというのはやはり上りで攻めるのだろうか。走りながらこのひとつの疑問が頭をもたげる。

では脚力の弱い僕はどのようにして攻めるということに臨めばよいのだろう。上りが無理なら下りはどうだろう。下るチカラを利用してそれをそのまま走るスピードに転嫁できないだろうか。これこそが大会前に感じつつあった体のバネを利用して攻める唯一の方法だと思った。

第28回蒜山高原マラソン全国大会 フォト4

バネはどこから生まれるのか。姿勢を改善する過程で足ふくらはぎにその感覚を得たように思う。腰を入れ肩を落とし首を伸ばし顎を引く。膝は軽く曲げ重心を低く保つ。端的にいうとこれに落ち着く。

首が伸びた状態が足のふくらはぎに連動しているとはにわかに信じ難いが、思い起こせばこれまでは顎が上がっていたように思う。だからその違いを考えると足に力が込められていることが自然と理解できる。

第28回蒜山高原マラソン全国大会 フォト5

だからとにかく下るチカラとふくらはぎのバネを頼りに攻めることに挑戦した。姿勢を低く落とし顎をひき首を伸ばし腰を入れた状態をひたすら保つ。下りのときグイグイ前に進む。これまでにないグイグイ感。一転、上りに変わった途端我慢のときとなる。

下りのときだけ妙に頑張るものだから周りのランナーは不思議がってないだろうか。そんな不必要な心配をしつつ逆に上りのとき急にトーンダウンするのも不思議なのではとさらに心配を重ねる。

バネを維持しようと意識を高めるほど首と腰にかかる負担は大きく、ハーフマラソンおよそ半分の折り返し地点を過ぎる頃にはそれは相当なものになっていた。折り返して後半は首・腰の位置を維持することがまさに今回の走り美におけるアイデンティティーへと変わった。

第28回蒜山高原マラソン全国大会 フォト6

バネはゴールまで本当に維持できていたのだろうか。残り5キロ、3キロとゴールが近づくにつれてその自信が薄らいでいく。しかし、いつも応援してくれるワイフと友人はいつにない力強さに驚いていたらしい。バネはおそらく弱含みながらも維持できていたようだ。

後日、毎度定点観測のように撮影しているビデオをチェックしてみると、確かにゴールに向かって走り抜こうとする姿が見てとれた。ここ数年と比較しても明らかに力強さは増し、攻めたという事実を映像は如実に表してくれた。

第28回蒜山高原マラソン全国大会 フォト7

結果としてハーフマラソン完走1時間50分台への突入は走り美の進化を決定づける記録であり自信となった。走るたびに成果がありまた課題が生まれる。次なる進化に向けてまた挑戦したいと思う。