2014年10月19日(日)
第33回蒜山高原マラソン全国大会
- ハーフマラソン40才以上男子の部
- 記録 1時間54分01秒
とうとう55分の壁を超えた。
この壁はハーフマラソン2時間から1時間台に突入してからというもの、超えられそうでこえられない低そうでとても高いものであった。
こんなにも透き通るような晴天に初めて!というような良き天候。昨年度大会の雨のヒルゼンは何だったんだろうとふと思い出す。
2週連続週末は台風が上陸し、10月だというのにどういうことだと今年の異常気象を物語っていた。しかしその台風がいや〜なものをすべて持っていってくれたのか、これまでにないコンディションにもうやるしかない、あとは走るのみという状況であった。
台風がもたらしたサプライズはまだある。いつもお世話になっているNadjaさんから新たにはじめたログハウスのほうにステイしてみてはと提案いただいた。このうえなき喜びとばかりに向かってみると、広大な敷地に立つそれは大きなログハウスに驚き唖然とした。その大きさを説明するときに火サスに出てきそうなログハウスというとだいたいの人に伝わった。
ワイフと2人なのに、何部屋もあるし、どこに座ろうか悩むほどのリビングになかなか落ち着かなかったが、身体サイズを超える空間体験に最終的にはむしろ心地よさを感じていた。ありがとうNadjaさん、ありがとう火サスなるログハウス。
大きな蒜山のふもとにある大きな家、そのなかで人とはとても小さな存在であることを痛切に感じた。
ガラス越しに朝日がのぼり、それを受けて思わず体が動きだし準備体操。自然と一体になれた気がして心豊かになれた。
スタート位置にはじめて悩んでみた。いつもは前後の真ん中あたりにいるのだが、ここだとスタートしてからゾロゾロと進む感じがあり、のんびりふんわりスタートの走り美とはいえさすがにリズムに乗れない。
意を決して前に出ようと早めにスタート地点に向かった。するとチラホラと見受けられるぐらいであまり人がいない。つなぎ放題えらび放題である。勇気を出して前列を陣取っている歴戦のランナーにたずねてみた。
どうぞどうぞ、最前列にどうぞ。いやいやそれは逆に危ないでしょ、迷惑かけますし。まぁ2時間弱ということでしたら、ここよりちょい後ろで、でも自分のペースで進んだほうがいいですよ。ありがとうございます、ではこのあたりで。
心優しきお言葉をいただきスタートを待つことに。時間が経つにつれ、ぞくぞくと集まるランナーの強靭な体つきに肩身がせまく心細く感じたが、ここに立つだけの準備をしてきたと自分に言い聞かせた。
いざスタートすると猛烈なスピードに巻き込まれるということもなく、自分のペースで進むことができた。しばらくは歴戦のランナーに追い抜かれ続けた。それは嫌なことではなく、自然と自分の走る場所が定まってくるのだとむしろ望ましく思っていた。
3キロほど走ると周囲のランナーとシンクロしてきた。蒜山マラソンお馴染みの心臓破りの坂にも足が前に出る感じがあった。これは日々の足上げ練習が功を奏しているのか、前に出す足に力強さすら感じた。
これまで登りに対しては足を疲弊させないよう体重移動で乗り切ろうとしていた。登りで力強いランナーを見ては課題と感じていた。その課題に対して一歩前に進むことができた。登りで進めない分を下りで攻めるスタイルをとっていたが、これには足先を痛めるリスクがある。ようやく登りも下りも等しくたたかえるようになれた。
聞くつもりはないがきこえてくる音がある。まわりのランナーの時計音になんとなくいま何キロ地点を何時ぐらいに通過していることを認識する。どうせ知るならしっかり知ってやろうと、いつも使っている iPod nano をポケットに今年は走ってみた。
折り返し地点でポケットから取り出してみると1時間を切っていた。登りの多い往路でこの感じだと復路は下り、同じまたそれ以上が期待できた。このペースでこの力強さ、もしや1キロ5分、1時間45分も夢じゃないと思わず興奮した。
後半も上げる足に注視しながら前に出す足にチカラを感じていた。それでも疲労は自然と蓄積され、楽に感じるときもあれば妙に苦しく感じるときもありそれを繰り返していた。
ここでもうひとつ日頃の鍛練を試すときだ。それが横隔膜を大きく使う呼吸法だ。疲れを感じたときにこそ大きく息を吸い込み、横隔膜を使って体中に押し出す。これで疲れが癒えるとまではいかないが元気が出てくる。
この横隔膜を使う呼吸法を意識するようになってから上半身がしっかりしてきた。下半身に比べて上半身のか細い状態が続いていた。気にはなっていたがどうしたものかと手付かずのままでいた。
ところがどうだろう、引っ越してからというもの日常の生活に木を切ったり草を刈ったり石を運んだりということが当たり前となったことと相まって、胸まわり腕まわりがひとまわりもふたまわりも大きくなった。上半身のチカラが下半身に伝わり走りがより安定したように思う。ムリのない筋力アップ方法が、日常の生活にあったとは。
往路も復路も変わらずペースを保てているつもりであったが、やはりそれは気持ちであって次第にペースダウンしていた。登りでたたかえるようになったと思い、下りで少なからずブレーキをかける傾向があった。足先をケアしてのことではあったが。
ゴールしたときは空前の記録が出たのではと鼻息を荒くした。なぜか残念な気持ちになったけど、堂々の新記録1時間55分を切る結果となった。日常の延長線上にある走りを標榜する走り美は、このマラソンでまた一歩そこに近づけたように思う。引っ越して自然と身近になり、木を切り草を刈り石を運ぶ生活がしっかり走りの礎となっている。