走り美 Quality Of Running
走り美 Quality Of Running

過去に参加したマラソン大会のレポート

2013年2月24日(日)

そうじゃ吉備路マラソン2013

フルマラソン男子B組の部
 記録 4時間57分57秒

とうとう 走り美 はフルマラソン挑戦への思いに至った。

いつかはフルマラソンと思い、始めた 走り美 。その いつか に、ぼくはついにやってきた。

そうじゃ吉備路マラソン2013 フォト1

そんな気配はふつふつと感じていた。それこそ吉備路マラソンに参加しはじめた頃から、そろそろか、まだか、と考えるようになった。ハーフマラソンの受付のとなりにあるフルマラソンの受付が気になっていた。フルマラソンの引力にひかれるように。

そして、3度目のハーフマラソン1時間台、2時間を切るタイムをもってフルマラソン挑戦へと歩みを進めたいと直近の蒜山マラソンで決意した。タイムに関係なく挑戦への思いはもう揺るぎなかったが、自分への弾みが欲しかった。

驚いたことがある。大会当日も、大会に至るまでも、フルマラソンだからといって特別なにかしら高揚するわけでもなく、とりわけ静かに、静かなフルマラソン移行となったのである。それだけの準備と、心をもって臨めたというわけか。

そうじゃ吉備路マラソン2013 フォト2

さて、スタートである。未知なる体験は、いつまでも待ってくれるというわけではなく、スタートの位置に立ったならば始まるのである。

気温はもちろん冬の寒さであったが、寒すぎるというわけではなかった。ただ気になったのが「風」で、思ってる以上に体感では寒く感じていた。

案の定、走り始めて数キロもするとその兆候があらわれはじめた。妙に仮設トイレの配置が気になるようになっていた。風で体が冷えてしまったようだ。

これまで参加したハーフマラソンでは、そんな気持ちにならなかった。脳裏によぎったとしても、走っているうちに次第に薄れていっていた。

そうじゃ吉備路マラソン2013 フォト3

走りながらトイレに行く。脳内の意識領域が拡張されるほどの体験であり、カルチャーショックであった。

フルマラソン挑戦には、未知なる体験がまだある。それは、走りながら食す である。とにかく腹が減った。ワイフから「途中なにか食べたほうがいいよ、おにぎりをどこかで渡そうか」とアドバイスされていた。

そ、そんな、走りながらおにぎりを食べるなんて想像できない、まぁ、大会から配給されるパンやらフルーツがあるはずだから、気が向いたときに食べることにしよう、と思っていた。

ところがところが、20キロを過ぎたあたりから、次の補給ポイントが気になる気になる。もう明確に「パンが食べたい」と頭のなかを廻っている。

手前がクリームパンで、奥がジャムパンなんて情報はもう頭に入ってこない。パンが食べたいのである。すかさず手に取り、迷わずムシャムシャと食べた。あぁ、あの時ジャムパンという選択肢もあったのか、いっそのこと2ついっぺんに、いやいや、それはいくらなんでも食べ過ぎだろう。

喉が渇くはずだから、飲み物を手にしてからとか、この期におよんでまだそんな小粋なことを考える自分もまだこの頃には残っていた。

さて、走りのほうはというと...
ハーフマラソンとは違った、がんばっても、張り切り過ぎず、心は熱く、それでいて冷静な、ハーフマラソンを全力フルスロットルとするならば、フルマラソンはそれこそハーフな力加減を目指した。

チカラ半分というよりはキモチ半分といったほうがいいだろう。おそらく見た目には通常の走りとなんら変わりない。走りを器用にチェンジできるほどの技量はないし、そのチェンジ幅も微差である。つまり、ハーフマラソンで培ってきた走りでどこまでいけるかというところ。

そうじゃ吉備路マラソン2013 フォト4

それでも、気持ち半分だからこれまでになくとても気楽な気分で走ることができた。走ることを楽しむってこういうことなのかと少しだけわかったような気がした。

30キロまではハーフマラソンの走りで、残り10キロは気持ちでなんとか... と想定していた。

確かに経験済みの20キロまでは順調そのものだった。お腹が減った25キロあたりで異変を感じた。応援に来てくれた友人のナイスペースの声に僕もナイスペース感の手応えがあったのだが。

そうじゃ吉備路マラソン2013 フォト5

30キロ付近でピタリと足が止まった。もう足が前に出ない。パンを食べようがバナナを食べようが時すでに遅し。残り10キロは気持ちでなんとかできるような距離ではなかった。

給水ポイントでひと休みしても足がまったく回復しない。ひと休み、ふた休みとその間隔がどんどん短くなっていく。10キロが途方もなく遠く感じられた。

それでもなんとか走り続けたが、次第に歩く時間が長くなった。過去のマラソン大会でも、歩くようなスピードで走ることはあっても明確に歩いたことはなかった。

歩くからなかなか前に進めない。この状況に落胆していても歩かざるをえない。2倍も3倍もこの時間が長く感じられた。ゴールまでの5時間の多くがここで費やされたように思う。

そうじゃ吉備路マラソン2013 フォト6

快調、ナイスペースな姿で折り返し地点を通過したものだから、ワイフも友人も思いのほか早くゴールするのではと待ち構えていたそうだが、一向に現れない。心配して自転車で様子を見に来てくれた。あと3キロ、足の痛みはピークで、この頃はシビレみたいなものもあって、思わず泣きそうになった。

しかし、最後のチカラを振り絞り、いろんな走り方を試しながら、歩くように走った。ゴールが間もなくと思うとなぜか走れるんですね、不思議なもので。

感動が止まらないってこういうことなのか。数十メートル手前で一度、数メートル手前で二度目、ゴールで完全に涙しました。もう自然と溢れ出た。思い出しても、体の状態を考えてもあんなにキツかったのに、なぜか「フルマラソンは楽しい」と思えた。これまた不思議。

スタートしたからゴールできるわけではない。そのための準備を重ねたからゴールできるわけでもない。ワイフの支えがあって、友人、家族の応援がある。なにひとつ欠けてもゴールに辿り着くことはできない。だから完走できたことを、誇りに思います。